ギラン・バレー症候群になった日(3:宣告)

byomei

11月14日の朝、目が覚めるとすごい脱力感。右手は痺れ、左腕の怠さは半端ない(力が入らない)、その上、両足に痺れという状態。でも一人でふつうに着替え、朝食を取り、自転車で関東労災病院に向かった。え?と思われるかもしれないが、そんな状態ながらまだ四肢はちゃんと動いたし、自転車には乗れたのです。でも、10分ちょっと走って病院に近づいてきたころには、手の痺れが次第にキツくなってきた。

初診窓口で手続きをし、神経内科に移動。待ち合いで待っている30分ぐらいの間にも痺れと怠さは増していく。カラダもどんどん怠くなってきた。
看護師に呼ばれ、体温と血圧を計ったら37.4℃、血圧は165/110ぐらい。ふだんの血圧が130/85あたりだからかなり高い。

どんな症状かと訊ねられ、A4用紙を一枚渡した。実は当日具合が悪すぎてうまく話せなくなかったら困ると思い、前の日にそれまでの経過をメモにしていたのだ。看護師に感心された(笑)ようやく問診となり、私のメモなどに目を通した医師は開口一番、「ギラン・バレー症候群という病気をご存知ですか?」と発したのだ!

「キター!」決して喜んだわけではないが、やはりそれなのか!という思いがあり、なんとなく一瞬だけスッキリした。しかし、その時点では「疑い」に過ぎない。私「脳の異常ではないですか?」医師「念のためにこの後調べますが、脳梗塞などであれば、舌の痺れが冷たいものを飲んだときだけに痺れが発症するということはなく、(痺れの症状が)出っぱなしになるだろうし、四肢の症状が神経系のものだと感じます」

医師は続けた。「ギラン・バレー症候群なら一日でも早く治療に入らないといけないので、即入院してもらうことになるが、それで構わないですよね?」と言われ、抵抗することもなく「はい」と了承した。

診察が終わるとすぐに点滴。そして採血やら髄液抽出やらいろいろな検査に回された。家族に電話する間もなく、11時を過ぎて筋電図検査というものに進んだころ、ようやく連絡できた。私「いますぐ入院らしい、どうやら俺が言ってたギランバレー症候群みたい!」と告げると妻は「予想が当たって喜んでる場合じゃないわよ」と言った。

そんなこんなで最後の筋電図検査。この検査、受けたことがある方ならご存知かもしれないが、とにかく痛い。神経1本1本に電流流して伝達速度を調べる検査だが、何度も逃げ出したくなった。四肢すべてを検査するのに2時間くらい要すのでそれも辛い。検査中に担当医師が検査室に来て、検査技師に「どう?」と聞いた。検査技師は「間違いなくGBですね」と言った。GBはグレートブリテンではなく、ギラン・バレーの略だった。

というわけで、私は読み通り10万人に1人〜2人という希有な難病「ギラン・バレー症候群」の認定を受けることになったのだ。

ギラン・バレー症候群になった日(2:急変)

11月12日(水)夜になって、右手親指、人差し指に加え、左手の人差し指が痺れ、左腕がだるくなり始めた。「これは何がなんでもおかしい」明日もう一度病院に行こう。

11月13日(木)朝、昨日までの症状がほんの少し軽くなっているような気がしたため、朝は病院に行かず会社に行き仕事をしていた。その日の夕方取引先と大切な商談があったからその準備をしていたのだ。
すると、昼前あたりからまた症状がキツくなり始めた。右足の指先と足の裏も痺れ始め、右手親指の痺れが強烈になってきた。

前夜、いろいろと検索していたとき、ギラン・バレー症候群という聞き慣れない病名を知ることになった。むむ?もしかしてこれか?少しこの病名を疑ったのにはワケがある。
実は11月の初めに4日ほど強烈な下痢が続いてた。風邪の一種かなと思っていたが、素人に痺れと下痢の因果関係はわからない。邪推でしかないなと思っていたが、症状が重いのは事実。
やはりもう一度病院に行くことにした。脳裏には「これ、あかんやつかもしれん」と不安がよぎった。

恵比寿のクリニックで事情を説明すると、神経内科の専門医に診てもらったほうがいい。と。自宅近くの関東労災病院への紹介状を書いてもらい、翌日の金曜日に行くことになった。医師に下痢の件も伝え、「ギランバレー症候群」じゃないですかね?」と話してみたが、労災病院ではできるだけ詳しく伝えてください、と言われただけだった。

とにかく明日だ。と言い聞かし、夕方、取引先へ。打ち合わせが終了し、帰路へ。自宅最寄り駅に着くころには、両足の指先と足の裏が痺れ始めていて、なんとも言えない気持ち悪い状況になっていた。
帰宅後、商談のレポートを関係者にメールしていたら、左腕がどんどん怠くなってきて、病名は何かわからないが、本当にアカンやつや!と確信した。

ギラン・バレー症候群になった日(1:異変)

2014年11月14日(金)は今年、いや人生でも忘れられない一日となった。それは私が聞き慣れない病名「ギラン・バレー症候群」と診断された日である。2週間入院後、退院。今は自宅療養&リハビリ中。入院から1ヶ月経ち、パソコンも触れるようになってきたのでこれまでの経緯を残すことにする。

第1の異変は突然やってきた。週初めの10日月曜日、ランチに恵比寿駅近くのCoCo壱番屋で一人カレーを食べていたときのこと、辛さを和らげるため氷水を口に含んだ瞬間、舌が急にピリピリピリと痺れ、言いようのない強烈な苦味が口内に広がった。「ん?なんじゃこりゃ」続けてカレーを食べるとどうもない。なんかイヤな感じを受けながらも気にせず仕事をし、帰宅した。夕食時にビールを開け、一口飲むと昼間と同じようにピリピリピリと舌が痺れ、口内に強烈な苦みが広がった。「昼間と同じだ…」その夜、パソコンで「舌 痺れ 味覚障害」で検索しまくったことは言うまでもない。

こういうのはだいたいストレスから来るものだ。春から新しい仕事にチャレンジし、結構大変な時期を過ごしていることはわかっている。カラダも正直だなあ、なんて思いながらその日は終わった。

翌日11日火曜日、午前中に耳鼻科に行き、診てもらった。舌に炎症や腫瘍の類いは見られないとのことで消毒薬のようなうがい薬をもらって終了。金曜まで症状が続くなら検査しましょう、と。こちらも冷たいものを飲んだときにしか現れない症状なので、あまり気にせずにいたのが正直なところだ。

しかし、ほどなくして第2の異変が訪れた。火曜日の夕方には右手の親指が痺れ始めた。その夜には人差し指も痺れ始め、肩凝りが原因かな?などと考えながらも、立て続けに起きたカラダの異変に妙な胸騒ぎがしていた。翌12日水曜日には、かかりつけのクリニックに診てもらい、ヘルニアが疑われたのか、頸椎のレントゲンを撮られた。すると、首の骨にわずかに変形が見られたため、ひとつの原因と仮説を立てられた。が、私としては、立て続けに起きている症状(冷たいものを飲んだときの舌の痺れ→味覚障害→右手親指→人差し指の痺れ)が怖すぎたので、念のため、脳も診てほしいとお願いした。
結果、週末にスキャニングセンターを予約してもらい、すみずみまで検査してもらうことになった。

会社では部下に「少しカラダがおかしい」程度にしか伝えてなかったのだが、それもそのはず。この時点での私はストレス、疲労、肩凝りが一気に出て来たぐらいにしか思ってなかったのだ。

夜になってその楽観的な考えは消えていった。