Satoru ONISHI について

総合通販マーケ/EC→制作会社ディレクター/ECコンサル→文房具マーケ/EC→化粧品健康食品通販EC→専門業態店小売業のEC/CRM部門と流れてきてます。好物はもっぱらEC/通販界隈です。ECに関わるすべての人を幸せにしたい。座右の銘は「笑うてるヤツが一番強い」活動理念は近江商人の「三方よし」目下の目標は「心地良いショッピング体験」

KALDI(カルディ)の店頭コーヒーサービスを考える

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KALDI(カルディコーヒーファーム)の店頭で配られている試飲のコーヒーサービス、ファンの方にはお馴染みのサービス。私は入店の際に必ずと言っていいほど頂戴します。

商業施設などでKALDIのロゴとコーヒーの香りを認識すると、パブロフの犬よろしく、あの甘いミルクコーヒーの味が脳内によみがえります。疲れているときなどはなおさら飲みたくなりますね。

私もそうなのですが、コーヒーを手渡されると大抵は一口で飲み干すではなく、少しずつ口にし、他のお客さんとぶつからないよう注意しながら店内を徘徊する方が多いようです。飲み終わるとカップを捨て、外に出る。あるいはあらためて店内を物色する。
自分の場合はどうでしょう。コーヒーサービスを受けてからのコンバージョン率はそう高くないと思いますが、あの一杯のコーヒーがお店の中に入るきっかけになっていることは間違いないですね。

夏場のアイスコーヒーも良いですが、冬場のほうが好きですね。家やカフェであの甘さは受け付けないのですが、ショッピングで歩き疲れたカラダにあの甘さはちょうどいい。何かホッとする感じ。
同じ試食/試飲でもKALDI(カルディ)の店頭コーヒーは、スーパーやデパ地下の試食とは異なりますね。

私の脳内では「KALDI(カルディ)=コーヒー試飲、そのカップ一杯の甘いコーヒーは買い物疲れのカラダと気分をリフレッシュできるほんの少し癒される時間」という公式が成り立っています。
その癒しの時間に後押しされ、ついつい買い物を続けてしまうという方が多いのではないでしょうか。

1977年創業(今年で38年目)の同社は世田谷代田で設立した株式会社キャメル珈琲が前身、もともとは豆の焙煎をしていたようだ。1986年にはカルディコーヒーファーム1号店を下高井戸でオープン。現在のコーヒー試飲サービスは1992年の下北沢店オープン時に始まったそうです。

同社のサイトによると、

夏の盛りにご来店下さったお客様へ、おもてなしの気持ちを込めてアイスコーヒーのサービスを始める。これをきっかけに、店頭でお客様にコーヒーをお渡しする「コーヒーサービス」というカルディ独自のスタイルが生まれた。

とあります。
スタートは単なるサービスとの位置付けでも、立派なフリーミアム戦略と言えますし、今ではブランドのアイデンティティにまで昇華しているのではないかと思いますね。下世話な話ですが、個人的にはコーヒー試飲した方がレジまで行くコンバージョン率が気になりますね。すごく知りたい。

しかし、こういうカルディのコーヒーサービスのようなスタイルをEC上の接客で表現できないものでしょうか。
もちろん味覚も臭覚もパソコンやスマホ上で表現するのに十二分な技術はないでしょう。時折、WBS(ワールドビジネスサテライト)のトレンドたまごなどで紹介される技術などにデバイスを使って味覚、臭覚を感じさせるというのはありますから、技術的に進歩はしているはずですね。

こればっかりはデータベースとレコメンドエンジンの組み合わせではできないところかもしれません。いや、技術背景ができればデバイスと組み合わせて、DBとレコメンドとの組み合わせでWEB接客は可能ですね。サイトの滞在時間が増えるような策は皆さん実施されていると思いますが、このKALDI(カルディ)のように、コーヒー試飲によってリフレッシュできて、新たな買い物スイッチが入る。というようなフリーミアムと滞在時間が長くなって、ブランドアイデンティティも固まるような仕組みができればいいなと思います。KALDI(カルディ)のオンラインショップを閲覧するとすーっとコーヒーの香りが入ってきて、買い物も楽しくなるって日も近いかもしれませんね。

コーヒー飲みながらWEB見ろよ、って野暮なツッコミはご容赦ください(笑)

「夢を持ち続け、伝える力を養う」ジャパネットたかた高田社長が教えてくれたこと

1/16、昨夏引退発表していた一人のカリスマ社長が本当に潔く退任を発表した。
有言実行の表現者、ジャパネットたかたの高田明社長だ。

記者会見での声のトーンがふつうだったなどと低俗な物言いで書かれているが、そんなことはまったくどうでも良い。そんなことより、希代のカリスマが引退することを素直に寂しいと感じる。

ジャパネットたかたのことを今さら説明する必要はないだろう。長崎・佐世保のカメラ屋時代にラジオショッピングからスタートし、テレビショッピングに進出、折込チラシやカタログ→ネットと進み、全国全媒体をカバーする通販企業。家電系のみならず、今後はファッション、宝飾、食品なども強化とのことでもはや立派な総合通販。「ラジオ比率が1%になっても聴いている人にとっては100%だからラジオは辞めない」との発言は非常に高田社長らしいと思う。

ひとつ意外なことある。ジャパネットの売上はチャネル別比率で見ると、紙媒体の比率がもっとも高く、次いでネット、意外にもテレビはネットより低く3番目、そしてラジオの順。顧客層は8割が40代以上でネットは弱いはずと勝手に思っていたが、きちんと対策は進んでいたようだ。

2004年の顧客情報漏洩事件の際は、誠意ある謝罪とスピード判断により原因がわかるまで販売自粛(結果47日間自粛)、その間150億とも200億とも言われた機会損失も営業再開後は順調に回復。また、エコポイント終了の煽りでテレビが売れなくなり、業績が2期連続で落ちた後の2013年には白物家電に力を注ぎ原点回帰、ピーク時から600億も凹んだ業績をV字回復させた。こうしたことからも高田社長の経営手腕が並大抵ではないことはおわかりになるでしょう。甲高い声と佐世保弁のMCばかりが注目される人物ではないということだ。

そんな(個人的にも好きな経営者である)高田明社長が教えてくれたこと。できてないことばかりなのでこの際目指してみる。

  • ライバルはAmazonでも楽天でもなく「過去の自分」という姿勢。
    競争相手は関係ない。常に昨日の自分と戦うことで自己は磨かれると私も思う。
  • スペックではなくベネフィットを伝え続ける
    メーカーやブランドが伝えたいと思っているスペックは伝えず、(この商品を)使うことでどれだけ幸せになるか、どれだけ便利になるか、どれだけ周囲の方が喜ぶか、商品の持つ魅力とベネフィットを訴え続けるMCスタイルは本当に勉強になった。スマホもウォーターサーバも電子辞書も高田社長にかかればメリットしか感じられないw
  • 努力し続けて、夢はようやく叶う
    高田社長のようにストイックにはいかないかもしれないが、いつまで経っても半人前の私もできることからがんばってみたい。
  • 部下に夢を語る、こどもに夢を語る
    高田社長流「オープンリーダーシップ」の根幹は「夢を語る」こと。
  • 伝える力を養う
    借りてきた言葉ではなく、自分自身の言葉で思いを伝えること。伝える力が消費を創る。高田社長らしい言葉だと思います。

高田社長を見ていて、皆さんがどんな印象をお持ちかわからないが、私は、この人は不器用で真っ正直な人なんだろうなあ、と勝手に思っている。根拠はまったくないが、台本なく即興であれだけエモーショナルに商品説明できるのは、入念に準備した上で語っていく器用さがなく、思いが言葉となって沸き上がるMCスタイルのほうが自身の伝える力が最大限に発揮できると考えているからに違いない。それはそれで器用に考えているということかもしれないが。

高田社長は経営からこのたび完全引退し、個人事務所をベースにジャパネットたかたをサポートしていかれるとのこと。ちなみに「AandLIVE(アライブ)」という社名は「あきら(A)は生きている」という意味だそうだ。実にユニークじゃないか。年に1度くらいは出演するのかな?そうならそれはそれで楽しみだ。

動画はGLOBIS福岡での講演から(GLOBIS TV)長いのでお時間のあるときでも。高田明氏の魅力(語り)が満載。

国産衣料品に高まるニーズ、国産比率は盛り返せるのか

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Photo:Lara Cores

1/15付日経の記事で「衣料、国産巻き返し」という見出しが気になった。本当に巻き返せるのか?考えてみよう。
記事を要約すると、
国産衣料の高品質は、国内消費者、訪日外国人からの支持も得、浸透しつつある。無印良品は国産スーツを販売開始、業界団体は「純国産」の認定制度を始めるなど、落ち込む衣料品の国産比率が盛り返す可能性あり。
バックデータとして、国内流通衣料品の国産比率は、20年前30%前後、今や4%を割り込む事態。

そりゃそうなりますよね。90年代後半から長らく続いているデフレはもう17〜8年ぐらい続いている計算になります。85年のプラザ合意に端を発した円高進行により、繊維産業の海外移転は進み、その上デフレ。コスト至上主義の生産計画に、海外(特に中国を中心とする)生産拠点との賃金格差、ファストファッションの普及により、とことんまで国内生産需要は縮小したと言っても過言ではありません。結果、国内を流通するアパレル製品の95%は海外生産品になったと。

下のグラフは、プラザ合意以降2010年くらいまでの繊維産業事業所数と従業員数の推移です。国内の繊維産業はこの30年近くで4分の1以下になってしまったということです。

繊維産業事業所推移

加えて、縫製工場や染工場などは若年層がおらず高齢化まっしぐら。未来につながるであろう「服飾/家政」を目指す専門学校の学生はこの30年で半減という現実。
国内生産がいいからと言われてすぐに対応できる世の中ではないはずです。原料、加工、仕上げ、さまざま工程で縮小と高齢化が極限まできている現実を考えれば、ちょっとやそっとの号令で国内生産が盛り返せるとは思えないですね。

ただ、盛り上げる人たちも出てきているのは事実で、だからこそ記事になっているのですが、日本の繊維産業が提供する価値はクオリティの高さにあることは周知の事実。昨年春にIVSのローンチパッドで入賞した、国内アパレル工場と消費者を直接つなぐ「ファクトリエ」のように、高品質/高付加価値を適正な価格で届けられる仕組みがもっともっと世に出てきてほしいものですね。そうすれば風前の灯となっている産業も表舞台に立てる気がします。そのために必要なIT技術やサービスに期待したい。