小さな会社こそ、高く売りなさい

竹内謙礼さんの本をいくつか読んだことがありますが、たいていタイトルに釣られて買うことが多いのです(笑)。でもそれは悪い意味ではなく、私がその瞬間に課題として考えていることがタイトルとなって自分の目に浮き出て見えたからなのです。

ただ、今回はタイトル全体ではなく、中身です。決して、小さな会社の価格戦略にフォーカスを当てたものではなく、小さなサイズゆえの性(さが)や先入観、思考性などについて記されていたからです。いわゆる「小さな会社」をこれから大きく成長させていこうとする中で、最初に押さえておかねばならないこと(ヒント)が中身をちら見したときに浮かび上がったのです。

いやあ、読み進めていくうちに寒気すら覚えました。これは竹内さんが「概論」ではなく、実体験に基づいて整理してきた考え方なんだと思いますが、典型的な零細企業、特に技術があるが売り方知らない的な会社にはズバズバ当てはまるような気がしました。小さな会社から中規模サイズまで該当する気がします。

そもそも、小さな企業が生き残っていくためには、大手と同じやり方をしていたのでは無理。それは現在大手企業に成長した企業を立ち上げた過去の賢人達もそう思っているはずです。ヒトやモノにはお金がかかる、投資して失敗すればその分ビハインドになります。が、企画(アイデア)を考えるのにはお金はかかりません。例え、出した企画がモノにならなかったとしても、それだけでは大きなリスクはない。だから小さな会社は企画で勝負しなさい、というものです。でも、その「企画」には結構エネルギーがかかる、そこを小さな会社はないがしろにしがちというインサイトなのです。読んでてアタマが痛くなるのを覚えました(笑)

小さな会社にとって非常に辛辣な表現を用いてますが、かなりの洞察だと思います。言うは易しと評する方もいらっしゃるかと思いますが、私は読んで良かった一冊だと思います。

「宇都宮×ソトコト 地方を楽しむダブルプレイス・トーク」に参加して感じた「地方」

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(Photo:宇都宮観光コンベンション協会)

一昨日(1/31)、Facebookでの友人の投稿でこのイベントのこと、「ダブルプレイス」というニ拠点生活の価値観があることを知りました。私自身は宇都宮とは縁もゆかりもないのですが、地方出身者として地方都市のこれからのあり方や楽しみ方、向き合い方には関心もあります。それにリハビリがてら外出を少しずつ増やしているフェーズだったし、良い天気の日曜日、朝から暗いニュースも流れていたため、気分転換も兼ねてちょっくら出かけてみようということで行ってきました。

会場は武蔵野大学にあるロハスカフェARIAKE、会場には市役所の方や地元最強メディア、下野新聞社の方などがいらっしゃって、もっと小ぢんまりとしたイベントを想像していたので会場の雰囲気に宇都宮の本気度(失礼!)を感じました。

トークゲストは、宇都宮の佐藤市長、宇都宮ブランド推進協議会会長の古池さん、安藤美冬さん、そして、清澄白河 gift_labの後藤さん、池田さん、そして、実際に宇都宮をダブルプレイスとして生活している、シェアハウス「KAMAGAWA LIVING」住人代表の後呂さんと、「KAMAGAWA POCKET」の中村さんの7名、ファシリテーターにはソトコト編集長の指出さんといった顔ぶれ。

前置きはこのへんにして、感想を少し。
ふだんの仕事やプライベートの時間にはない時間と環境がそこにはあり、宇都宮をモデルに自分なりに地方のことを考える機会が持てたと思ってます。

冒頭でも触れましたが、私は1度だけ餃子を食べに行ったこと以外、縁もゆかりもありません。2010年から「住めば愉快だ宇都宮」というブランドメッセージを掲げ、全国に対してPR活動を強化していることも今日知りました(すみません)。

しかしながら、佐藤市長や実際に暮らしている後呂さんや中村さんのお話などをうかがっていると、宇都宮への興味はわいてきました。印象に残ったのは、面積の80%が平地で自転車乗りに優しい町であること、農商工のバランスが非常に良い都市であること。自然災害が少なく、外から流入してきた人にもやさしい(らしい)こと。まあ、こういう場では良いことは聞かれますが、悪いことはあまり出てこないですよね。暮らしてみないとわからないことがあるのはどの都市に行っても同じことなのであまり気にしませんが。ただ、もう一度ちゃんと訪問してみたいと正直思っています。

私は地方出身者であるがゆえに、地方が好きです。仕事を求めて首都圏で暮らしていますが、基本的には田舎者ですし、地方が持つ魅力がもっともっと認知され、そこに暮らす人が流動的になるべきだと思っています。この先どんなことがあっても首都東京が遷都するということはあり得ないでしょうから、地方はもっと魅力を持ち、強く逞しい存在にならないといけないと感じています。
旅に出るとその地方が好きになります。良いところ、たくさんあるんですよね。「ローカル」であることはとても素晴らしいことです。
ただ、残念なことも。どこに行っても全国規模のナショナルブランドや大手小売業のショッピングモールによって消費がコントロールされていることなど。逆にどこに行っても同じ味やサービスに出会えるという安心感も一方であります。でも、買い物が楽しいのは「ならでは」の場所。海外に行ったときに楽しみなのはローカルスーパーに行くこと。だから地方に旅行に行ってもそういう地元スーパーを探します。

さて、肝心の「ダブルプレイス」という価値観ですが、私が今日認識したのは、仕事でも生活場所でも遊び場でも何でもいいから自分にとって縁があり、居心地いいと思えるようなところ(拠点)を行き来したり、週末移住してみたり、といった生活拠点を2つ持つということです。
私の場合、どうでしょう。この2拠点に自分の実家である高松市は入るのだろうか。いや、入りませんね。高松は幼少〜多感な時期を過ごした、ある種神聖な場所であり、最もホッとする街。その反面、多くのしがらみがある場所です。もし何か新しいことにチャレンジするとなると、血が濃すぎるあまり、地元での関係性があしかせになるのではないかと思ってしまいます。

私はそういう意味で、縁が濃すぎない場所をダブルプレイスにするのがいいのではないかと思います。その方が街にとっても本人にとってもイノベーションが起きやすい気がするのです。

私が学生のころなど「暮らす場所」としての選択は「地方(地元)か都市圏か」しかありませんでした。高松で育ち、大学は西宮、就職は京都、転職してUターン、そしてまた転職して上京。。。住んだところはどこも好きですが仕事の場所、勉強の場所という感覚なので「ダブルプレイス」という価値観には至っていませんでしたね。年齢も重ねてきたので老後の心配などもありますが、もっと自分が自分らしく活動できる場所として、地方都市とうまく出会え、心地よさを感じ、そこで出会った人たちと核融合よろしく新しい「芽」が出てくる暮らしはとってもおもしろいかもしれません。そういう意味でも「ダブルプレイス」という価値観を知ることができてよかった。

最後に。地方がもっともっと元気にならないと日本はつまらない。せっかく訪日観光客が増加し、その波は都会だけではなく地方にも向けられています。都会ではとにかく訪日消費ばかりに気を取られ、内需の弱さをカバーしようと躍起になっていますが、地方はそんな消費喚起の施策とはまったく異なるアプローチができると思います。無責任発言で申し訳ないですが、国内へのアピールももちろん、外国人にとってもダブルプレイスになれるような魅力ある都市にしていくことが必要ではないかと感じました。

いつもと違う脳を使えた気がします。またこういう機会があれば参加したいですね。
この本、もう一度読み返してみようかな。。

やっぱりECが好き

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完全復帰までの慣らし運転の一環で、いい加減、脳も動かしていかないとということで朝からマーケティングテクノロジーフェア&イーコマースEXPOへ行ってきました。
旧友を訪ねる感じでブースをいくつか回って、セミナーも1つ受講してきました。

久しぶりに感じたのは、あー、やはり私はEC(Eコマース)が好きなんだなということ。そして、ECに救いを求めている人はこんなに多いのね、ということです。
某コンサルタントの話を聞く機会もありましたが、「私がこれまで関わってきたことは、A社を月商100万から1800万にしました、 B社を月商380万から2400万にしました、C社を3年で年商4億から16億にしました。。。」もともとのレベルはわかりませんが、とにかくこういう話を真剣なまなざしで聴いている人が大勢いるのですから、EC業界は依然として魑魅魍魎の世界なのかもしれないですね。

私も長年に渡り、この通販/EC界に身を置いてた人間の一人として考えると、EC黎明期はとっくに終わったと思っていたのですが、違いましたね。日本の事業者300万社総EC時代が訪れるのではないかと感じています。特に日本のマーケットの縮小っぷりから考えると、グローバルECが当たり前になる時代もそう遠くないのではないかと思ってみたり。
いずれにしても、メーカー、卸、小売、どの業態であろうとECへの活路は開かれているし、その道で上手に生きていく企業が残っていくのではないかと。

ただ、ECで本業の売上構成比でインパクトを残す、既存チャネルを凌駕するだけの売上を作るなどという目標はそうそう立てられるものではありませんし、やるといってすぐに積み上がるものでもありません。私は数年前にコンサルをやっていたことがありますが、ECを立ち上げればすぐに幾ばくかの売上ができると思っている経営層の方がいらっしゃいました。もうそんな時代じゃないよなあ、と思ってましたが、実際はまだ「そういう」時代なのです。
よく言われることですが、ECは自動販売機ではありません。作って置いておけば自動的に売上ができるというものではなく、育成することが大切なのです。箱も人も。

ECを生業にしている企業は本当に地味で細かいことを積み上げていて、そこに経営資源をきちんと投じています。もちろんすべての企業が該当するわけではありませんが、受注を作るためのコストと販管費の違いを理解し、細かくKPIを設定し、チーム内には適度な競争意識があり、自らの成長と事業の成長とのベクトルが合っている。相当、きれいごと言ってますが、そういう会社は本当にありますよね。

他人の心配するより、まずは自分のところの足元固めですが、今日思い出したことやあらためて感じたことは今すぐ使えると思うので、またネジを巻き直そうかと思っています。私を育ててくれたECへの恩返しのためにも。