ネット通販は「物流」が決め手!レビュー

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(Photo : konstantin.tilikin)

古くからのお付き合いでもある高山隆司氏の『ネット通販は「物流」が決め手!』を読みました。
通販業界の御大とかレジェンドとか呼ばれている高山氏の本著は、一言で言うなら「通販の教則本」といったところでしょうか。帯に「物流KPIでの経営改善、オムニチャネルまでネット通販”物流”におけるノウハウを解き明かす」とありますが、経営者やEC(ネット通販)部門の部門長クラスのみならず、流通、小売、メーカーの中で初めて通販チームを立ち上げたり、着任したりした方にとってもおススメの一冊だと思います。

ネット通販のノウハウ本は数あれど、運営ノウハウや販促面にフォーカスしたものが多いのですが、本書は通販がどういう仕組みで動いていて、その中の現場業務のキモはどこにあるか、大切にしなければいけないことは何かといったビジネスモデルそのものを分解しながらわかりやすく説明してくれていると思います。特に第3章のウェアハウジングの実像はこれからネット通販をやっていく企業にとってすごく参考になるでしょう。

私自身、14年間通販会社に在籍したこともあり、本著の内容から懐かしさや忘れていた点をもう一度思い出させてもらうことができました。物流戦略を(企業が)勝つためにやるという視点は大事だし、商材や成長フェーズによって物流面の攻め方が異なることなど、あらためて頭に叩き込むことができました。

また、顧客視点で見る「物流」は、単なる発送業務ではなく、大切なお客様との終着接点の演出の場であることの大切さを本書は示唆しています。お客様に本当に喜んでいただくために「物流」は存在し、その達成のためには多少細かいことも思われるかもしれないが、物流視点のKPIを持つこと。ここを見ることで健全な経営環境を目指すことができると感じた。

終盤章では、事例がいくつか紹介されているが、いずれのケースも単なるクライアントの紹介ではなく、物流面での付加価値創出による成功要因を記しています。自らの商材では何ができるだろう?何をすればいいのだろう?読みながら考える機会となりますね。

ネット通販の将来は…と、あらためて考えるまでもなく、すべての小売業や製造業が自ら消費者に商品を届ける時代がすぐそこまできています。本書は自社の成長ステージやリソースなどを考えながら一歩前に進むきっかけを作ってくれる一冊になるかもしれません。
自分にとっては今のタイミングで読めたのは良かったと思います。

小さな会社こそ、高く売りなさい

竹内謙礼さんの本をいくつか読んだことがありますが、たいていタイトルに釣られて買うことが多いのです(笑)。でもそれは悪い意味ではなく、私がその瞬間に課題として考えていることがタイトルとなって自分の目に浮き出て見えたからなのです。

ただ、今回はタイトル全体ではなく、中身です。決して、小さな会社の価格戦略にフォーカスを当てたものではなく、小さなサイズゆえの性(さが)や先入観、思考性などについて記されていたからです。いわゆる「小さな会社」をこれから大きく成長させていこうとする中で、最初に押さえておかねばならないこと(ヒント)が中身をちら見したときに浮かび上がったのです。

いやあ、読み進めていくうちに寒気すら覚えました。これは竹内さんが「概論」ではなく、実体験に基づいて整理してきた考え方なんだと思いますが、典型的な零細企業、特に技術があるが売り方知らない的な会社にはズバズバ当てはまるような気がしました。小さな会社から中規模サイズまで該当する気がします。

そもそも、小さな企業が生き残っていくためには、大手と同じやり方をしていたのでは無理。それは現在大手企業に成長した企業を立ち上げた過去の賢人達もそう思っているはずです。ヒトやモノにはお金がかかる、投資して失敗すればその分ビハインドになります。が、企画(アイデア)を考えるのにはお金はかかりません。例え、出した企画がモノにならなかったとしても、それだけでは大きなリスクはない。だから小さな会社は企画で勝負しなさい、というものです。でも、その「企画」には結構エネルギーがかかる、そこを小さな会社はないがしろにしがちというインサイトなのです。読んでてアタマが痛くなるのを覚えました(笑)

小さな会社にとって非常に辛辣な表現を用いてますが、かなりの洞察だと思います。言うは易しと評する方もいらっしゃるかと思いますが、私は読んで良かった一冊だと思います。