8月に読み終えるはずだった課題図書『顧客体験の教科書』をようやく読み終えました。
著者はグッドマンの法則でおなじみの「ジョン・グッドマン氏」、和訳はラーニング・イットの「畑中伸介氏」
本書はサブタイトル「収益を生み出すロイヤルカスタマーの作り方」が示す通り、顧客体験価値をいかに高め、ロイヤルカスタマーを創るか、そのための戦略論や方法論をはじめ、企業が取り組むべきことが事例を交え書かれています。
私自身は、これまで総合通販、メーカー、制作会社、単品通販という立場でEC/通販の実務とマネジメントを経験しており、当然のことながらCRM、UX、UI、CSという各単語が持つ意味を理解して、実践していたつもりですが、カスタマーエクスぺリエンス(CX)という考えのもと、事業が担うべき方法論をインプットしたことはなかったので、とても勉強になりました。
かなり広範囲に問題を挙げられていますが、おおまかな説明だけに終わらず、どういう解決策が良いのか、失敗事例、測定指標の考え方に至るまで書かれているので、自社の課題認識をきちんと持った上で読んでみると実践に向けての準備がすぐにできるのではないかと思ってしまいます。
しかし、正直、本書で書かれているようなことが実践的できている理想的な企業はそうそう多くはないと思うし、CXに(考えが)向いてない企業の中でこのフレームワークを実践していくのは大変でしょうが、これを従業員が理解し、少しずつでも実践していくことで、企業(ブランド)と顧客の関係性は必ずや変わっていくでしょう。
私自身、思い起こせば「小さな文字でも一応書いていれば後で問題にならないだろう」と言ってQ数をかなり落とした小さな文字で注意書きを読みづらくしてしまったり、「記載するスペースがないので今回はまあ割愛するか、こんなこと当たり前だと思うしな」などと本来なら記載しないといけないことを削ったりといったことをやってしまった記憶があります。こういうおざなりな考えでは最高の顧客体験どころか、ロイヤルティの低下を招いてしまうということを肝に命じておかねばなりません。
顧客の事前期待はとても単純。顧客は予期しない不快な出来事を嫌がる。顧客は何か特別な、驚くほどすばらしい体験を期待しているわけではない。むしろ、約束通り、自分の注文したとおりのものが不快な出来事やわずらわしさを体験せずに手元に届けられることを願っている。
自分が経験した企業の対応や公的機関の対応で、嫌な思いをしたことのバックヤードで本書にあるような方法論が取られていたら、どれだけ”あの”会社を、”あの”ブランドを嫌いにならずに済んだかと思ってしまいました。そういう意味では多くの企業が実践してほしいと切に願いますね。
本書を読むことで、例えば、製造、品質管理、営業、マーケティング、サービス、顧客対応といったそれぞれ部門において考え直したり、業務の見直しをできることもあると思います。
ただし、その環境や組織作りにはどうしても経営層や責任者、上級管理職といった層の理解が必要。このあたりのポジション、特に私はマーケティング部門の方、CMOというポジションの方に読んでいただきたいと。
本書に出てくるいくつかのキーワードの中でもっとも響いたのは、
「DIRFT(Do It Right the First Time)物事は最初に正しく実行すべき」
ですね。言われてみれば当たり前なのかもしれませんが、”鉄は熱いうちに打て”みたいなものだとも思うし、よく事件などで初動捜査が肝心などと言われるのと同じかと。
まあこの本は何度か読んで咀嚼していかないといけない一冊ですね。メーカー、小売、通販/ECなどさまざまな業種向けだと思います。